中判錦絵 天保初年(1832-34)頃 題名の「五島」とは、現在の長崎県五島列島のことです。江戸時代から近代にかけては鯨漁が盛んだった地域で、その漁の様子を描いています。高台から海を俯瞰(ふかん)する構図で、1頭の巨大な鯨の周りを、旗を立てた多くの小舟が取り囲もうとしています。鯨の周りには細かな水しぶきが表現され、迫力のある描写が見て取れます。しかしながら、北斎が長崎を訪れたという記録は残っておらず、何らかの図を参考に描いたと考えられています。