冨嶽三十六景 甲州石班沢

作品解説

大判錦絵 天保2年(1831)頃
ピーター・モース コレクション 区登録有形文化財(絵画)
現在の山梨県南巨摩(みなみこま)郡富士川町鰍沢(かじかざわ)の景観を描いたものです。鰍沢は、甲府盆地を流れる笛吹川(ふえふきがわ)釜無川(かまなしがわ)が合流する地点であり、ここから日本三大急流の富士川となり駿河湾へと流れ下って行きます。富士川の荒波が激しい水飛沫(しぶき)を上げる迫力ある本図は、冨嶽三十六景シリーズの藍一色で摺られた藍摺作品の中でも傑作として評価が高いものです。また、くの字に体を曲げて網を引く漁師と富士山が相似形(そうじけい)となっている点など、北斎の幾何学的な構成力の巧みさをうかがわせる1図でもあります。

錦絵