冨嶽三十六景 諸人登山

作品解説

大判錦絵 天保2年(1831)頃
ピーター・モースコレクション 区登録有形文化財(絵画)
富士山頂でお鉢廻りをする富士講の人々を描いています。富士講とは、富士山を崇拝する山岳信仰であり、またその信者が富士登拝を目的に集まったグループをさします。富士登拝のクライマックスは、火口を囲む8つの峰を廻るお鉢廻りです。白の行衣ぎょうえに編み笠、金剛杖を携えた格好で、険しい岩をよじ登る様子が描かれています。風除けの石室いしむろに大勢の信者がひしめく様子やゴツゴツした岩肌に高山ならではの厳しさが描き出され、また左上の空間に何も描かないことで高度感が表現されています。シリーズ中、唯一富士山の内部を描いた1枚です。

錦絵