冨嶽三十六景 武州玉川

作品解説

大判錦絵 天保2年(1831)頃
ピーター・モース コレクション 区指定有形文化財(絵画)
富士山を様々な視点から描いた全46図からなるシリーズのうちの1図で、現在の東京都西部を流れる多摩川(たまがわ)を描いたものです。川面に一(そう)の舟が浮かび、たなびく霧の向こうに富士山を望む情景は、静かで神秘的です。本作は、初摺かそれに極めて近い時期のものと考えられており、後摺では省略されることの多い手の混んだ技法が見られます。それは「空摺(からずり)」という技法で、多摩川の川面の波を、色を着けずに凹凸だけで表しています。この波の空摺は、現存する大半の「武州玉川」には見られません。

錦絵