冨嶽三十六景 従千住花街眺望ノ不二

作品解説

大判錦絵 天保2年(1831)頃
現在の荒川区南千住にあった中村町や小塚原(こづかはら)町といった千住宿の南端の町々から、浅草田圃(あさくさたんぼ)越しに吉原遊郭、上野の山、富士山を望む景色を描いたものと思われます。手前の侍たちは、日光街道または奥州街道を通って国許に帰る参勤交代の大名行列と考えられます。赤い筒状のものを担ぐのは、附袋(つけぶくろ)に入った鉄砲を肩にした鉄砲組です。その後ろには毛槍を担ぐ槍組が続きます。茶店や畔道でひと休みする旅人や農婦も描かれ、何気ない日常の一こまを切り取ったような雰囲気が秀逸です。

錦絵