長大判錦絵 天保初年(1833-35)頃 奈良時代の学者の阿倍仲麻呂は、遣唐留学生として中国に行きましたが、帰りの船が難破してしまい、帰国を果たせずに没しました。本図は『百人一首』に選ばれた「天の原ふりさけみれば春日なる三笠の山に出(い)でし月かも」を基に描かれています。中国風の建物から満月を眺めて故郷をしのぶ仲麻呂の姿を、藍色を基調にして静謐(せいひつ)な色合いの情景の中で表現しています。