冨嶽三十六景 相州江の島

作品解説

大判錦絵 天保2年(1831)頃
片瀬海岸から江の島と富士山を望む1図です。島の中腹に見えるのは、針医の杉山検校が建立したとされる三重塔で、明治時代の廃仏毀釈で取り壊されて現存していません。建物の屋根や帆船の帆柱と綱の三角形と、富士山の三角形を対比した構図になっています。現在は江の島まで橋が架かっていますが、当時は本図のように干潮時には砂州(さす)を渡って行きました。白や青の点で波の泡やきらめきを表わす繊細な表現も使われています。芸能の神様として江戸の人々も参詣に訪れた江島弁財天の様子を伝える作品です。

錦絵