大判錦絵 天保(1833-44)前期 北斎唯一の武者絵のシリーズのうちの1図です。鎌倉権五郎景政(かげまさ)は、寛治元年(1087)の後3年の役に弱冠16歳で出陣しました。鳥海弥三郎保則(やすのり)に右眼を射られますが、眼に矢がささったまま保則を追いかけて、その矢を射返し勝利をおさめたという逸話が残っています。本図でも、景政は手に弓を握り、口を引き結んだ力強い表情で、保則の上に乗りかかっています。鮮やかな甲冑をまとった2人の武者が画面いっぱいに繰り広げる戦いの様子は迫力があります。