作品解説
大判錦絵 天保6年(1835)頃
三十六歌仙にも数えられる平安時代前期の歌人、藤原敏行朝臣による『百人一首』の和歌「住の江の岸に寄なみよるさへや夢の通ひち人目よくらん」から連想されるイメージを描いた作品です。「住の江」から、本図には大きな廻船がイメージされています。住の江は現在の大阪市住吉区を中心とする一帯にあたります。古代は海岸線で入江をなしており港津として栄え、また松の名所で歌枕としても知られる景勝地でした。廻船の窓からは乗組員が外をのぞいています。遠景に小さく描かれる神社の建物は、住吉大社を描いていると思われます。住吉大社は海上交通の守護神や和歌の神としても信仰されています。