版画の作り方

皆様は版画の作り方をご存知でしょうか?ぼんやりとは浮かぶけど、具体的に何をするのかはわからない、といった方も多いのではないでしょうか?
本日はこの版画の作り方について簡単にご紹介したいと思います。
 
まず、版画制作は、「版元」と呼ばれる当時の出版社にあたる店から絵師に対して作画を依頼するところから始まります。絵師は版元の指示を受け、絵の下書きをします、その下書きに対して版元から「OK」が出されると、清書を作成します。この清書のことを「版下絵」と呼び、版木に裏返して直接貼り付けるため、薄い紙に墨一色で描かれていました。
 これができあがると、いよいよ彫師が登場し、版下絵が貼られた版木に墨の線だけを残し、周囲を彫っていきます。これにより、「主版」と呼ばれる画線部だけが残った墨色の版木ができあがります。
 次に、色版(カラーの版画を作るための版木)作成のため、摺師が主版をもとに色の数分だけ摺っていきます。これを「校合摺」と呼びます。絵師は摺師が作った校合摺に対して「この部分はこの色を使う」といったように、1枚1枚色を指定していきます。
 絵師が使いたい色を指定したら、今度は彫師がその指示通りに版木を彫っていきます。例えば、版画の中で赤色を使うのであれば、赤色を使用する部分だけを彫りあげていくことになります。これを校合摺と同じく色の数分だけ作らないといけません。色が10色あれば、10枚の色版を彫ることになるので、相当大変な作業だったのではないでしょうか。
 最終的に、それぞれの板を摺師が摺り重ね、ようやく1枚の版画ができあがるのです。
 
 こういった作業を頭に思い浮かべて作品を眺めてみると、版画の見方が変わってきませんか?下記の版画は「新板浮絵三囲牛御前両社之図」という作品ですが、絵師・彫師・摺師それぞれの専門技術がいかんなく発揮されないとこのような色鮮やかな版画を作りだすことは到底できません。
新版浮絵三囲牛御前両社之図

 新版浮絵三囲牛御前両社之図

  皆様が次回版画を鑑賞する機会がありましたら、版画の完成に至るまでの工程を思い出してみてください。もしかしたら新しい発見があるかもしれませんよ。
 当サイト「版画の豆知識」コーナーでも版画についての紹介をしております。是非ご覧ください。