百人一首宇波か衛とき 三條院

作品解説

大判錦絵 天保6年(1835)頃
平安時代中期に在位した第67代天皇の三条院による『百人一首』の和歌「こころにもあら浮世になへはえば恋しかるへきべき夜半よわの月かな」から連想されるイメージを描いた作品です。三条院は、外孫の後一条天皇を立てようとした藤原道長により、眼病を理由にして退位を強要させられたと伝わっており、退位を考えていた頃、月を見ながらこの歌を詠んだといわれています。本図では宮廷内での儀式の様子が描かれています。明るい満月の夜に、元服前の少年が薬壺を掲げ、祈りを捧げています。暗闇に映る満月と、そのもとで深々と頭を下げる人々の姿は、歌意の辛く悲しい心情を表現しているように見えます。

錦絵