百人一首うばがゑとき 伊勢

作品解説

大判錦絵 天保6年(1835)頃
伊勢は平安時代の代表的な女性歌人の1人です。「難波潟なにわがたかき芦のふしのまも逢はてあわでこの世を過くすぐしてよとや」は、恋する人にほんの短い時間ですら会えないもどかしさを詠んだものです。難波潟は干潟ですが、ここでは田圃の風景に置き換えられています。手前の建物には女性が2人描かれ、眉を落とした主と思われる女性は外を眺めていて、どことなく物憂げな表情に見えます。北斎が伊勢の和歌をどのように解釈し、本図を構成したのかは不明ですが、待ち人を想う女性の心情を想像させる情景です。

錦絵