展示構成および本展の見どころ
序章:浮世絵のプロデューサー 板元とは
1章:腕利きプロデューサー 蔦屋重三郎
1節 初代蔦屋重三郎
2節 二代蔦屋重三郎
2章:北斎と関わるプロデューサーズ
1節 京発祥の老舗 鶴屋喜右衛門
2節 蔦重最大のライバル 西村屋与八
3節 名古屋の雄 永楽屋東四郎と江戸の実力派 角丸屋甚助
4節 北斎最後の錦絵シリーズを出版した板元 伊勢屋三次郎
5節 幕末を代表する板元 森屋治兵衛
3章:現代に継承される浮世絵版画制作と北斎
序章 浮世絵のプロデューサー 板元とは
板元とは、版本や版画を出版・販売する店のことで、今でいう出版社、出版取次会社、小売りの本屋、古本屋まで兼ねた存在です。江戸の板元は扱う内容によって、学問的な書物を扱う書物問屋(物の本屋)と娯楽的な「草双紙(くさぞうし)」と呼ばれる絵入り本や浮世絵版画などを扱う地本問屋(絵草紙屋)に区別されます。本展で取り上げる板元たちはこの地本問屋に属します。娯楽系の出版物の売れ行きは社会の動向や流行に左右されるため、世の流れに目を配り客が求めるものを企画するプロデューサーとしての力量が問われました。序章ではそうした板元の仕事を知る第一歩として、浮世絵の制作や販売に関する基礎を解説します。
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参考図版:三代歌川豊国「今様見立士農工商 職人」安政4年(1857)
町田市立国際版画美術館蔵
1章 腕利きプロデューサー 蔦屋重三郎
蔦重こと蔦屋重三郎は、新吉原で開業し、江戸の中心地である日本橋に進出します。時代の求めるものを見抜く力によって、大田南畝(おおたなんぽ・1749-1823)や山東京伝(さんとうきょうでん・1761-1816)といった一流の狂歌師や戯作者たちとともに話題となる本を出版し、喜多川歌麿(きたがわうたまろ・1753-1806)や東洲斎写楽(とうしゅうさいしゃらく・生没年不詳)といった新たな浮世絵師たちの才能を発掘するなど、江戸文化の発展に寄与しました。初代没後は番頭が後を継ぎ、五代目を最後に明治時代まで続きます。本章では、初代と二代の2人の蔦重が北斎へ与えた影響とその結果生み出された作品群、関連資料を紹介します。
1節 初代蔦屋重三郎
寛延3年(1750)に新吉原で生まれ、安永年間(1772-81)に新吉原の五十間道(ごじっけんみち)で本屋を開業しました。天明3年(1783)には日本橋通油町(とおりあぶらちょう)へ進出、黄表紙(きびょうし)や狂歌本等の名作を次々に出版し、かたわら錦絵も版行しましたが、寛政3年(1791)に山東京伝の本が絶版となるなど、さまざまな重い処罰を受けました。起死回生の策として東洲斎写楽の役者絵を出版しますが、寛政9年(1797)に数え48歳で病没しました。北斎については春朗を名乗っていた初期の錦絵、版本挿絵の出版が確認されており、蔦重なりに北斎を売り出そうとしたことがうかがえます。
葛飾北斎『画本東都遊』下 絵草紙店
すみだ北斎美術館蔵(通期)※1
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葛飾北斎「仁和嘉狂言 三月 花すもう」
すみだ北斎美術館蔵(後期)
2節 二代蔦屋重三郎
曲亭馬琴の日記などによると、本名は勇助といい、出身はいせや勘右衛門(かんえもん・板元の伊賀屋勘右衛門のことか)の妻の従弟でしたが、初代蔦重のもとへ来て番頭となり、初代没後には婿養子となって二代目として店を継いだとされます。北斎との関わりは初代よりも多く、北斎自画作の黄表紙や豪華な狂歌本なども次々と出版しました。
葛飾北斎『画本狂歌 山満多山』上
すみだ北斎美術館蔵(後期)
2章 北斎と関わるプロデューサーズ
「冨嶽三十六景」をはじめとする北斎の代表的な名所風景画のシリーズを出版した西村屋与八、江戸を代表する老舗板元として浮世絵の初期から代表的な絵師の作品を出版した鶴屋喜右衛門、『北斎漫画』の誕生に貢献した名古屋を代表する板元永楽屋東四郎など、北斎の画業を辿る上で重要な、または代表的な作品を手がけた板元が、蔦屋以外にも数多くいます。本章では蔦重以外の北斎に関わったさまざまなプロデューサーズの軌跡を、北斎の作品や資料によって辿ります。
1節 京発祥の老舗 鶴屋喜右衛門
京都の書物問屋が万治年間(1658-61)に江戸へ進出した出店を発祥とする老舗の地本問屋で、本姓は小林氏。北斎の時代は三代目にあたり、日本橋通油町に店を構えていました。堂号は仙(僊)鶴堂、商標は丸に鶴。浮世絵師の始祖とされる菱川師宣(ひしかわもろのぶ・?-1694)の作品から、喜多川歌麿、歌川広重(1797-1858)など有名な浮世絵師の作品を軒並み出版した代表的な板元ですが、天保4年の主人の急死や翌年の大火事、天保13年には天保の改革で柳亭種彦作『偐紫田舎源氏(にせむらさきいなかげんじ)』が絶版処分となるなど不運に見舞われ、その後は新作を出す出版元としては衰退、問屋業に重点を置くようになりました。
2節 蔦重最大のライバル 西村屋与八
宝暦年間(1751-64)から三代続いた江戸を代表する書物・地本問屋で、堂号は永寿堂(えいじゅどう)、商標は山形に三つ巴。店は馬喰町二丁目(中央区日本橋馬喰町)にありました。蔦重の強敵・初代に続く二代目は、老舗板元の鱗形屋孫兵衛(うろこがたやまごべえ)からの養子で、柳亭種彦(りゅうていたねひこ・1783-1842)を合巻(ごうかん)作者として育て上げ、鳥居清長(1752-1815)や歌川豊国(1769-1825)、鳥文斎栄之(ちょうぶんさいえいし・1756-1829)の名作を出版するなどの業績も残しました。そして、なによりも西村屋の浮世絵史に残る功績は、北斎の「冨嶽三十六景」を世に出し、浮世絵において風景画の確立に貢献したことです。三代目のときに経営不振に陥り出版業を廃業したと伝えられます。
葛飾北斎「冨嶽三十六景 凱風快晴」
すみだ北斎美術館蔵(通期)※1
3節 名古屋の雄 永楽屋東四郎と江戸の実力派 角丸屋甚助
永楽屋は、安永年間(1772-81)頃に開業した名古屋を代表する板元です。堂号は東壁(璧)堂で、北斎の時代は二代目にあたり、北斎の代表作のひとつである絵手本『北斎漫画』を手掛けました。蔦重とも提携し、名古屋以外にも美濃や江戸に出店を持ち、昭和26年(1951)まで続きました。 角丸屋は、もとは甚兵衛という名前で下駄の行商人をしていましたが、寛政年間(1789-1801)頃に麹町平河町二丁目(千代田区平河町)で書物問屋を開業、衆星閣(しゅうせいかく)と号し、弘化年間(1844-48)まで商売を続けたとされます。狂歌本、絵本、読本から一般教養書まで幅広く出版しました。『北斎漫画』は二編以降、永楽屋と角丸屋の共同出版でしたが、後に永楽屋の単独刊行となったとされます。
4節 北斎最後の錦絵シリーズを出版した板元 伊勢屋三次郎
天保年間(1830-44)に創業した新しい地本問屋で、堂号は栄樹堂(えいじゅどう)、商標は丸に三ツ星。店は小伝馬町三丁目(中央区日本橋小伝馬町)、のちに本町三丁目新道(中央区日本橋室町)等に移転しました。歌川国貞(1786-1865)や歌川国直(1795-1854)の錦絵を出版しましたが、嘉永(1848-54)末には地本問屋株を浜田屋徳兵衛に譲っています。北斎の最後の錦絵シリーズ「百人一首うばかゑとき」を出版した板元でもあります。
5節 幕末を代表する板元 森屋治兵衛
寛政年間(1789-1801)に創業した地本問屋で、堂号は錦森堂(きんしんどう)、商標は山形に森の字、通称は森治。馬喰町二丁目に店を構えました。喜多川歌麿、歌川豊国、歌川国貞、歌川広重(1797-1858)などの浮世絵師の作品を出版するほか、見世物関係の浮世絵や番付も多く手がけた幕末の代表的な板元ですが、抱えの彫師に良工が少なく、「森治の悪彫り」といわれました。しかしながら、北斎の作品では「琉球八景」「千絵の海」「詩歌写真鏡」、長大判の花鳥画シリーズなどの名品を残しています。
葛飾北斎「桜に鷹」
すみだ北斎美術館蔵(前期)
3章 現代に継承される浮世絵版画制作と北斎
江戸時代からの浮世絵版画の伝統的な技術を継承する出版元が、いまも活躍しています。その現代の出版元が手掛けた、北斎にインスパイアされた現代アーティストの作品を紹介し、今に息づく北斎の影響と伝統の浮世絵木版の手わざの世界を感じていただければ幸いです。
福田美蘭「冨嶽三十六景 凱風快晴」
すみだ北斎美術館蔵(通期)※1
※1半期で同タイトルの作品に展示替えをします。
作品リスト
企画展「北斎×プロデューサーズ 蔦屋重三郎から現代まで」作品リスト
観覧料
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通常
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団体
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一般
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1000円
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900円
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高校生・大学生
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700円
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600円
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65歳以上
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700円
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600円
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中学生
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300円
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200円
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障がい者
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300円
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200円
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小学生以下
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無料
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無料
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・観覧券については、日時指定によるオンライン購入が可能です。ご来館当日に受付に並ばずにご入館いただけますので、下のリンクからぜひご利用ください。※販売数に限りがありますので、あらかじめご了承ください
公式オンラインチケットサイト
・中学生、高校生、大学生(高専、専門学校、専修学校生含む)は生徒手帳または学生証をご提示ください。
・65歳以上の方は年齢を証明できるものをご提示ください。
・身体障害者手帳、愛の手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳、被爆者健康手帳などをお持ちの方及びその付添の方1名まで、障がい者料金でご覧いただけます。入館の際は、身体障害者手帳などの提示をお願いします。
・観覧日当日に限り、4階『北斎を学ぶ部屋』、常設展プラスもご観覧いただけます。
・団体でのご観覧は事前予約が必要です。団体のみなさまへをご確認ください。
・学校団体、校外学習でのご観覧は事前予約が必要です。学校の先生方へをご確認ください。
・観覧券購入後の変更、払戻しはお受けできません。ただし、不可抗力による休館が発生した場合に限り、払い戻しを行います。
展覧会リーフレット
展覧会の構成に沿って、オールカラーで見どころをたどることができるリーフレットです。
タイトル |
北斎×プロデューサーズ 蔦屋重三郎から現代まで |
価格 |
350円(税込) |
形態/ページ数 |
A4サイズ 全8ページ |
発売日 |
2025年3月18日(火) |
販売場所 |
すみだ北斎美術館1階 ミュージアムショップ |
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