美術館のすべての事業の基盤となるものが、コレクション(収蔵作品)です。すみだ北斎美術館では、成長し続ける美術館をめざして、国際的な期待に応えることができる、状態が良く質の高い作品を収集し、コレクションを充実させていきます。墨田区が収集した作品に加え、現在の収蔵作品のうち特筆すべきものとして、ピーター・モースコレクションや故楢崎宗重コレクションをはじめ、高名な研究者から譲り受けた資料があります。
ピーター・モース コレクション
ピーター・モース氏(1935年〜1993年)は、ホノルル美術館副主任研究員等を歴任し、東西の版画芸術を研究する一方、葛飾北斎の一大コレクターとして世界的に知られた存在でした。大森貝塚を発見したエドワード・S・モースの血縁(弟のひ孫)にもあたります。 モース氏のコレクションは、欧米における北斎の個人収集としては最高・最大の内容と言われており、研究者の眼で収集された希少価値の高い作品が多く含まれていることが特徴です。 平成5年のモース氏の急逝後、そのコレクションの散逸を惜しまれた御遺族が、すみだ北斎美術館の計画に理解を示されたことから、墨田区が総数600点に近い北斎作品や研究資料などを一括取得しました。
楢崎宗重コレクション
楢崎宗重氏(1904年〜2001年)は、浮世絵の研究者として数多くの著書や研究論文を発表され、浮世絵研究の日本での第一人者といわれています。楢崎氏のコレクションは、自身の研究活動の中で収集・所蔵していたもので、浮世絵版画に止まらず、浮世絵にまつわる資料として、日本及び中国の古美術から近世絵画・版画、近代絵画まで、さらに日記や絵巻物などの関連資料も含まれています。日本美術の正統的な価値を年代順に追うことのできるコレクションとしての価値は高く、体系的な美術史研究を進める上でも貴重な資料といえます。すみだ北斎美術館開設の趣旨に賛同、関係資料の収集などに御指導いただいていた同氏から、平成7年に一括して寄贈を受けました。