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各章の見どころと構成
本展のポイント
江戸時代までに伝わった平安時代の暮らしや王朝文学のイメージを、江戸時代の北斎や門人が絵画化。みやび感あふれる作品をお楽しみいただけます。
構成
【序 章】江戸時代の「平安」像
【第一章】「みやび」なイメージの形成 一節:都の暮らし 二節:怪異への恐れ
【第二章】描かれた王朝文学
【第三章】王朝文学ゆかりの意匠 一節:文学にまつわる文様 二節:一場面が意匠に
【序章】江戸時代の「平安」像
江戸時代、『源氏物語』や『伊勢物語』など古典文学の写本や解説書の流布、学問研究や教育の発展、『古今和歌集』などの一般化に伴う歌仙絵の盛行、古典文学や伝説の娯楽文化への広がりなどにより、広く平安朝の暮らしのイメージが形成されていきました。ここでは、江戸時代の「平安」像形成の背景がうかがえる作品をご紹介します。
振袖新造(遊女に付き従う禿から新造級に上がったばかりの若い遊女)と思われる美人が書物を読んでいます。花魁などの高級遊女は、古典の教養も求められていました。美人が読む書物の題簽には「枕の草紙」と書かれており、『枕草子』が一般に流通していたことがうかがえます。
【第一章】「みやび」なイメージの形成
北斎たちが描く王朝風の作品は、宮中行事や都の日常生活などが題材とされています。また都では、大陸から伝わった思想や学問と日本古来の信仰や伝説が結びついたことなどにより、怪異の存在が身近に感じられていました。本章では、江戸時代以降、平安朝の生活・文化や妖怪・怪異などの伝説がイメージ化され、広く流布していったことがうかがえる作品をご覧いただきます。
一節:都の暮らし
北斎による東海道の宿駅を描いたシリーズの一図です。ここでは、二人の童子が『源氏物語』にも登場する舞楽「胡蝶」を舞っています。「京」というみやびなイメージの象徴として胡蝶舞を取り入れて描いた可能性が考えられます。
貴人が、華やかな装束の女性たちを垣間みる場面が描かれています。貴人が垣根越しに屋敷の女性を覗くという構図は『源氏物語』第五帖「若紫」や第四十五帖「橋姫」などを題材とした絵画作品でも定型化されており、何らかの物語を想像させますが、画題は確定されていません。装束や御簾、植物などが細やかな筆づかいで描かれています。
二節:怪異への恐れ
柿本貴僧正は、平安時代前期の真言宗の高僧である真済(800-860)です。真済は、文徳天皇の后で美人として知られた藤原明子(染殿后)に恋い焦がれ、死後に天狗や紺青鬼となって取り憑き、明子をひどく悩ませたという説話があります。本図手前に紺青鬼姿の真済、後方に明子が描かれています。
鵺とは、頭は猿、胴は狸、尾は蛇、四肢は虎の姿をした伝説上の妖力をもつ怪獣です。本図のように胴体が虎の姿で描かれることもあります。
【第二章】描かれた王朝文学
江戸時代には、『源氏物語』『伊勢物語』などの王朝文学が盛んに絵画化され、北斎や門人たちもそれらを題材とし、それぞれの表現で幅広い作品を手掛けています。また、王朝文学を題材にしながら、人物表現を江戸時代の髪型や服装に置き換えた作品も描いています。ここでは北斎と門人たちによる王朝文学を題材とした作品の数々をご紹介します。
『源氏物語』を題材にした作品
『源氏物語』の中の和歌が使われた歌がるたです。青い縁の札に上の句、黄色い縁の札に下の句が書かれ、各巻にまつわる絵が添えられています。かるたを包む紙畳には紫式部が石山寺で『源氏物語』を執筆する様子が描かれた表紙が貼られています。表紙の図柄は後摺になると簡素なものに変わるため、本作は初摺に近いものと考えられます。
女流歌人をイメージして描かれた一図です。美人の背後にみえる鳥籠や讃の狂歌が『源氏物語』第五帖「若紫」などを思わせることから、この美人は紫式部をイメージしていると考えられています。
『源氏物語』第九帖「葵」などに登場する六条御息所が描かれています。六条御息所は夫の東宮と死別した後、光源氏と睦まじい間柄になりますが、嫉妬心から光源氏の正妻である葵の上の前に生霊となって現れ殺めたほか、死霊としても光源氏の回りの女性たちを苦しめます。本図はこれに取材した能「葵上」を思わせる蓬髪に般若の形相で描かれ、妖気を感じさせる黒い靄が漂っています。
『源氏物語』第三十四帖「若菜」上以降に登場する女三宮の見立てとされる作品です。女三宮は葵の上に代わり主人公光源氏の正妻となる人物です。ここで「若菜」に登場する猫ではなく、制作した年の干支と思われる猿が描かれています。
『伊勢物語』を題材にした作品
八ツ橋は古くから歌枕として親しまれ、『伊勢物語』の主人公とされる在原業平が和歌を詠んだ場所と伝わっています。現在の愛知県知立市に存在したといわれますが、作品名の「古図」が昔の図であることを示すとおり、北斎の時代にはすでになくなっていました。北斎は八ツ橋の題材を江戸時代の風俗に置き換え、旅人たちが湿原に咲く杜若を楽しみながら橋を渡る様子を描いています。
『枕草子』を題材にした作品
「五歌仙 檜扇」と同じシリーズの一図です。梅の花や讃の狂歌が『枕草子』百三十三段「頭の弁の御もとより」の藤原行成との梅のやりとりを思わせることから、清少納言をイメージしていると考えられています。梅の花や着物の文様には銀摺がみられます。
【第三章】王朝文学ゆかりの意匠
王朝文学にまつわる文様や物語から着想を得たデザインは調度の意匠として取り入れられました。北斎たちの作品の中にも『源氏物語』にゆかりのある文様や、歌がるたのような柄があしらわれた着物や調度がみられます。また、物語の一場面が調度の意匠として使われている作品もみられます。一節では王朝文学ゆかりの文様がみられる作品、二節では王朝文学の一場面が意匠として使われている作品をご紹介します。
一節:文学にまつわる文様
美人たちがかるたとりをする様子が描かれています。頬杖をつく美人の着物には源氏車の文様がみられます。源氏車は、平安時代の御所車の車輪を図案化したもので、文様として広く使われ、家紋としても利用されました。『源氏物語』第九帖「葵」に車争いの場面が出てくることから『源氏物語』を連想させます。
二節:一場面が意匠に
本書は櫛のデザインを描いた絵手本です。「源氏うきふね」は『源氏物語』第五十一帖「浮舟」を題材としています。「浮舟」は、光源氏の息子の薫と孫の匂宮を中心に、宇治の姉妹とともに展開していく物語です。ここでは匂宮が宇治に赴き、中君の異母妹である浮舟を宇治川対岸の隠れ家へ連れ出す場面が採用されています。
本展チラシ裏面について訂正とお詫び
配布された一部のチラシ裏面について、下記の誤りがありましたので以下の通り訂正いたします。深くお詫び申し上げます。
【誤】葛飾北斎『今様櫛きん雛形』櫛之部 下 源氏うきふね(通期)
【正】葛飾北斎『今様櫛きん雛形』櫛之部 上 源氏うきふね(通期)
※「きん」の漢字は竹冠の下に、手へんに金の字が正式となります。
作品リスト
観覧料
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9/18~11/24 |
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観覧券については、8月23日(金)より日時指定によるオンライン購入が可能です。
ご来館当日に受付に並ばずにご入館いただけますので、下のリンクからぜひご利用ください。
※販売数に限りがありますので、あらかじめご了承ください
公式オンラインチケットサイト
*団体でのご来館は、当面の間、受付を行いません。
・中学生、高校生、大学生(高専、専門学校、専修学校生含む)は生徒手帳または学生証をご提示ください。
・65歳以上の方は年齢を証明できるものをご提示ください。
・身体障害者手帳、愛の手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳、被爆者健康手帳などをお持ちの方及びその付添の方1名まで、障がい者料金でご覧いただけます。入館の際は、身体障害者手帳などの提示をお願いします。
・観覧日当日に限り、AURORA(常設展示室)、常設展プラスもご覧になれます。
前売券
本展前売券(通常料金の20%引き)を以下の期間で販売いたします。
販売期間: 2024年6月18日(火)から2024年9月17日(火)までの開館日
販売場所: すみだ北斎美術館 1階エントランス受付
展覧会リーフレット
展覧会の構成に沿って、オールカラーで見どころをたどることができるリーフレットです。タイトル | 北斎が紡ぐ平安のみやびー江戸に息づく王朝文学 |
価格 | 350円(税込) |
形態/ページ数 | A4サイズ全8ページ |
発売日 | 2024年9月18日(水) |
販売場所 | すみだ北斎美術館1階 ミュージアムショップ |
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